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仏教教団の分裂 1

 ブッダの死後、弟子たちが集まり、ブッダの教えを確認するようなことが
行なわれます※1。ブッダは、自分の教えを理論化し、体系化することには
あまり興味がなかったようです。
 対機説法という、相手に合わせた会話によって法を説くのが、ブッダの
スタイルです。

 このブッダのようなスタイルは、どの世界でも見られることです。
中国における儒教の祖、孔子は、やはり文字を残さず、対話によって道を
説きました。
 孔子の言葉をまとめた論語は、「子曰く(先生は言われた)」で始まる
会話調になっています。後世、朱子学などの儒学として学問化、体系化が
成されますが、孔子の時代にはまだ充分体系化されていませんでした。

 ギリシアには、ソクラテスという思想家がいました。
「ソクラテスの対話法」は、今でも欧米においてコミュニケーションの基本と
して学ばれているように、ソクラテスは対話によって教えた人なのです。
プラトン、アリストテレスと引き継がれる中で、理論化され一流の哲学にまで
なったことは、よく知られています。

 このような歴史的発展形態を考えた時、仏教もブッダ時代には対話レベル
であり、学問的レベルの理論化は後世行なわれたと見るのが自然だと思い
ます。
 ブッダが目指したのは、覚り(安楽の境地、不死の境地)なので、おそらく、
理論化や学問化は、ブッダにはあまり関心のないことのように思われます。
しかし、個別に相手に合わせた対話だけでは、後世に教えを伝えるときに、
非常に困るのです。相手によって言っていることが微妙に違うからです。
どうしても教えをまとめる必要が出てきます。

 心理療法の世界でも、同じような現象が見られます。
 天才療法家といわれたミルトン・エリクソン※2は、他では治らないような
クライアントを次々と治しますが、「クライアントの数だけ理論はある」といって
理論化には否定的でした。
 同じように、天才カール・ロジャーズ※3、自分のカウンセリングをほとんど
理論化していません。
しかし彼らの弟子たちは、師の療法を研究して、次々と理論化していきます。
その方が学びやすく、伝えやすいからです。

 これは私の想像ですが、ブッダもミルトン・エリクソンもカール・ロジャーズも
理論化するなかで抜け落ちていくものを、好まなかったように思います。
「本当の真実は、その場、その関係の中に存在する」と考えていたように
思います。

 ブッダの教えは、最初は口頭で伝えられ、やがてそれが文字として
書き残され、理論化されていきます。それは必然的な流れだと思います。
そしてその過程で、さまざまな流派や理論が生まれてきたのです。


※ 1 この弟子たちの集まりを結集(けつじゅう)という。
    第一次結集 ブッダ滅後すぐ行なわれる。歴史的事実かは不明。
    第二次結集 ブッダ滅後100年後くらい。戒律の確認をする。
            仏教分裂に関係しているという説もある。
※ 2 近代催眠の祖、ブリーフセラピー(短期療法)の祖とも言われる。
※ 3 日本のカウンセリングの基本として採用されることが多い。
     カウンセラーに受容・共感・自己一致があれば、クライアントは
     自ら変容していくとする。

---次回は 「仏教教団の分裂 2」 金曜日発行予定です。---

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