仏教を知る
仏教とは何か?
仏教にはいろんな宗派がありますが、すべての宗派に共通するものは何でしょうか?
そのキーワードは、「ありのまま」 だと思います。
初期仏教には、「如実知見」という言葉があります。ありのままにものごとを見るということです。
大乗仏教には、「諸法実相」という言葉があります。実相とは、ありのままの本当の姿を意味します。
密教には、 「如実智自心」という言葉があります。ありのままに自分の心を知るということです。
私達は、様々な思い込みや色眼鏡で世界を観ています。過去の経験や体験に彩られて、主観的にものごとを観ます。
そのため主観と客観の明確な区別ができません。
例えば、ここでは緊張する必要はない、アガル必要はない、と思っても、緊張してしまうことがあります。
何かに失敗した後、終わったことを気にしても仕方がないと思っても、どうしても気になってしまうことがあります。
このように、自分の心や身体は、自分の思う通りになるものではありません。それは、様々な思惑や反応が自分の身に起こるからです。様々な思惑や反応が起こる時、如実(ありのまま)にものごとを観て、扱っていくことが出来なくなります。
仏教や密教は、その思い通りにいかない世界からの脱却方法を示しています。やり方は八万八千の法門と言われるように、たくさんあります。そのやり方のことを仏教では「方便」と言います。
自分に合った方便を通じて、仏教の心髄を身につけていただければ、大いなる喜びであります。
仏教のややこしさ(なぜ仏教はこんなにも複雑なのか?)
仏教は、お釈迦さん(ゴーダマ・ブッダ)の教えを始まりとしますが、その後歴史の中で、多くの流派(宗派)に分かれ、各宗派がそれぞれの教義を持っています。仏教が分かりにくい理由のひとつがこの宗派の多さ、教義の多様さです。
現在の仏教は大別すると、テーラワーダ仏教、大乗仏教、密教の三つに分けることができます。
テーラワーダ仏教は、上座部仏教、南伝仏教とも呼ばれ、タイ、ミャンマー、スリランカなどを中心に広がった伝統派の仏教です。以前は小乗仏教と呼ばれたこともあります。ゴーダマ・ブッダの時代の戒律を守るなど、初期の時代の仏教を色濃く残しています。
中国、朝鮮、日本に普及した仏教は、大乗仏教と呼ばれます。それまでの教義を革新的に変えていった仏教で、キリスト教でいえば、カトリックに対するプロテスタントに相当するかもしれません。中国は共産主義国家、朝鮮は儒教の精神が強く、日本の仏教の現状は、よくご存知の通りです。大乗仏教が国家や民族の基本精神として機能しているところは、非常に少ないと思います。
大乗仏教の中でも、後期に発達したものを密教と呼びます。これは、日本とチベットに残っています。日本には、空海を祖とする真言密教、最澄を祖とする天台密教があり、チベットには、また異なる密教があります。チベット仏教は、テーラワーダ仏教や大乗仏教から密教へ体系的に学ぶのを基本としています。
「テーラワーダ仏教、大乗仏教、密教」の違いは、「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教」の違いと対比すると分かりやすいかもしれません。キリスト教とイスラム教はユダヤ教から発展してきましたが、基本的に同じ神を信じています。アラーもヤハウェも呼び名が違うだけで、同じ創造主です。ユダヤ教は、旧約聖書が聖典ですが、キリスト教は、旧約と新約の聖書が聖典です。イスラム教はコーランが聖典ですが、聖書も聖典であることには違いありません。しかしユダヤ教徒にとってコーランは、聖典になりません。
仏教に当てはめると、大乗仏教は、法華経や般若経などの大乗経典を基本経典にしながらも、テーラワーダ仏教で使われる初期仏教の経典も認めています。密教は、初期仏教経典、大乗仏教の経典も認めた上で、密教の経典を一番大切にします。逆にテーラワーダ仏教の立場からは、大乗仏教や密教の経典は、お釈迦さんの教えを変更したものですから、経典と認めるわけにはいきません。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と別宗教に分離していく西洋、中東世界に対して、内容が変わってもすべて仏教を名乗る東洋的アプローチの違いがあるように思われます。聖書も昔は、「ユダの福音書」などいろいろあったようですが、歴史の中で記述は統一されていき、異端と見なされるものは消されていきます。消された経典の中に真実があったかもしれませんが、消されていくことで教義としては単純化します。
仏教界では、いろんな人がいろんな経典を書き、それが統一されずにそのまま残っているような状況です。法華経や般若心経などの大乗経典の作者は全く不明ですが、すべて仏説(仏が説いた)と書かれています。仏教は神(絶対主)の存在を想定せず、誰のどんな教えでも、法に則っていればそれは仏の教えと考えるという性質があり、そのことが反映されているのかもしれません。しかし、いずれにせよ一般の人には分かりにくいだろうと思います。 【橋本 文隆 】
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