« 第3章思想編 真言密教の思想 6 | トップページ | 第3章思想編 真言密教の思想 4 »

第3章思想編 真言密教の思想 5

2. 密教の思想
 密教は大乗仏教のひとつとして生まれてきたものですから、密教の思想は大乗仏教の思想と異なるものではありません。原始仏教から部派仏教、大乗仏教に至るまで、すべてブッダの教えを元にしているわけですから、当然そこには共通性が存在します。同時に、大乗仏教として独自の思想発展を遂げてきた以上、そこには初期の仏教とは異なる思想が見受けられます。
 ここでは、大乗仏教(密教)の特徴的な思想をいくつか見ていくこととします。

菩薩行
 一般的に大乗仏教の特徴としてあげられることに、利他の重視(菩薩行)があります。利他とは自利に対する言葉であり、自らに利する(自身の覚りを重視する)立場から、他に利する(他人の救済を重視する)立場への転換になります。
 ブッダは慈悲の心を説き、他人に対しては慈しみの心でもって接することがすべての仏教の基本となっています。ですから利他行はブッダの時代から行われていることであり、大乗仏教の新しい行動ではありません。

 しかし初期の仏教においては、覚りを得て涅槃に往くことが最大眼目であると考えられます。涅槃に往くとは、輪廻転生の繰り返しを離れ、二度と苦であるこの世界に生まれないことを意味しています。死は生によって起こりますから、二度とこの世界に生まれないということは、二度と死なないことを意味します。ですから涅槃に往くことを「不死を得る」とも表現されています。それに対して大乗仏教では、涅槃に往くのではなく、この世に生まれ変わり続けて、人びとの救済を行う菩薩行が重視されるようになっていきます。

 空海は、「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなん」と、すべての衆生を救済するまで菩薩としての願いを持ち続けると記しています。ここには、菩薩としての生き方がよく現れています。
 大乗仏教(密教)は、菩薩として生きる道なのです。

|

« 第3章思想編 真言密教の思想 6 | トップページ | 第3章思想編 真言密教の思想 4 »

第3章思想編 真言密教」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第3章思想編 真言密教の思想 5:

« 第3章思想編 真言密教の思想 6 | トップページ | 第3章思想編 真言密教の思想 4 »