第2章歴史編 密教の誕生2
南伝仏教(テーラワーダ仏教)
南伝仏教とは、現在スリランカ・ミャンマー・タイなど東南アジア諸国に普及している仏教の総称です。中国や朝鮮、日本などに伝わった北伝仏教に対して使用される呼称です。
これらの国では自らの仏教を、上座部仏教やテーラワーダ仏教(長老仏教)と呼んでいます。これは、紀元前3世紀にインドからスリランカに伝わった上座部系の一部派がその起源となっているためです。テーラワーダ仏教では、パーリ語で記述された初期の経典を重視するとともに、『清浄道論』などの新たな論書も重視しています。また大衆レベルでは、仏教理論に加えその地域独自の文化と混在した形で信仰されています。
南伝仏教(テーラワーダ仏教)は、空海につながる密教とは直接の関係はありません。空海の密教は、北伝の大乗仏教のなかから生まれてきたからです。
しかし元をたどれば、どちらもブッダに行き着くことは同じであり、無常や無我など、基本的な教義は類似しています。
大乗仏教
大乗仏教は、西暦紀元前後からインドに広がった仏教の変革運動です。その成立過程には諸説ありますが、5世紀頃まで仏教遺跡に大乗教団の名が無いことから、当初は部派仏教教団から独立した存在ではなく,既成の部派内の思想運動であったと考えられます。
中国や日本に仏教が伝えられたとき、大乗仏教の成立過程などはほとんど伝えられることがなく、経典の成立年代とは無関係に経典が導入されました。
そのため中国や日本では、ブッダが多数の大乗小乗の経典を説法したとする理解にもとづいて,教相判釈(きょうそうはんじゃく)と呼ばれる、諸経典の比較解釈が行われるようになります。この解釈は、歴史的事実とは当然異なりますが、各宗派の仏教理解の基本となっていることが多いようです。
歴史的に見た場合には、初期の大乗経典として、『般若経』『維摩経』『法華経』『華厳経』『無量寿経』などがあげられます。空を説く『般若経』や、最澄や日蓮に強く信仰された『法華経』、阿弥陀仏を説く『無量寿経』など、現在の日本でも有名な多くの経典が作成されました。
大乗仏教は、その後思想的理論的発展を続け、中観(ちゅうがん)派と唯識(ゆいしき)派が成立します。
中観派は、空の思想を体系化した流派で、龍樹の『中論』が有名です。部派仏教全盛時代において、大乗仏教の思想的確立に大きな力があったものと思われます。
唯識派は、瑜伽行(ゆがぎょう)派とも言われるように、認識の直接の対象は識(心)の内にあると考え、瑜伽(ヨーガ)の実践を通して覚りを目指します。末那(まな)識や阿頼耶(あらや)識という、西洋心理学でいうところの深層心理を考え出したことでも有名です。
また大乗仏教の中では仏性や如来蔵という思想が発展し、人は元々仏となる可能性を宿していると考えられるようになっていきます。大乗仏典の『涅槃経(ねはんぎょう)』では「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」と表現され、衆生のうちには仏の因,仏と同じ本性があるとされています。
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