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第3章思想編 空海の独自思想 7

『吽字義(うんじぎ)』

 『吽字義』では、「吽」の一字でもって世界を現し、その一字をさまざまに解釈することによって、この世界の存在の本質(覚りの世界)を明らかにするという書です。世界の象徴として「吽」字を用い、象徴である「吽」を通して、仏法を説くわけです。

 『吽字義』は、吽の一字を字相字義を使って解説しています。字相は文字の表面的な意味、字義はその本質(実義)です。

 『吽字義』では、吽字を訶(かha)・阿(あa)・汙(う )・麼(まma)の4つの文字に分解することができるとしたうえで、訶・阿・汙・麼の4字を詳細に分析します。訶・阿・汙・麼の4字は、世界そのものを現す「吽」字を分解したものですから、この4字を分析することは、即ち、世界全体を分析することを意味します。

4字の字相(表面的な意味)は次のようにまとめられます。

・ 訶(か)字が、一切諸法が因縁より生ずることを明らかにする。.
・ 「一切の字の母」である阿(あ)字が、諸法の実体である空無を明らかにする。
・ 汙(う)字が一切法の、無常・苦・空・無我であることを明らかにする。
・ 麼(ま)字が、一切諸法に我・人・衆生という実体性があることを明らかにする。

 訶字は、ものごとは、原因と縁があって起こることを意味しています。
 阿字は、ものごとの本源を現す文字であり、それは空無であるとみます。
 汙字では、この世界は、無常であり、苦であり、空であり、無我であるとみます。これを損減(そんげん)といいます。
 麼字では、存在のなかに、我という実体、人という存在、生きとし生けるものの存在をみます。これを増益(ぞうやく)といいます。

 以上が吽字を構成する訶・阿・汙・麼(か・あ・う・ま)4字の字相(表面的な意味)です。

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