第4章技法編 密教の技法 3
1.密教の技法 - 心理療法の観点から
1.三密加持
2.阿字観(阿息観、月輪観、阿字観)
覚鑁は『ア字観儀(あじかんぎ)』のなかで、次のように阿字観の行法を説いています。
(アは悉曇(しったん)文字というインドの文字で、漢字では「阿」と表します。瞑想ではアを使います。)
◆「閉目開目、ただ一向にア字を注ぐべし。わが心月輪のなかに本有法然のア字あり。これ本不生の理なり。」
護身法を結び真言を唱えた後、数息観に入ったときの観意の説明です。呼吸に意識を集中しながらも、阿字本不生を観じていることが大切です。また観じている心と観じられている阿字を一体と観ずるとあります。これは仏との加持(入我我入)を意味します。
◆「口を少し開いて、出入の息を阿阿と唱念すべし。」
吐く息吸う息を「阿」と観ずる阿息観です。生まれでるときに最初のアを発して以来、悦びも悲しみもすべてはアであり、アは本来あるがままの陀羅尼(だらに) であるといいます。特に初心においては、その理由を問わず一心に「阿阿」と唱えるように言われています。
◆「ア字は月輪の種字なり。月はア字の光なり。月輪はア字とア字の光なり。」
続いて月輪観の解説があります。月輪は自からの円満で清浄なる心を現します。心月輪の徳を説き、月輪の自性清浄なるがゆえに、貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚癡(ぐち)(欲望、怒り・嫌悪、無知という根源的な3つの煩悩)の三毒を離れることができます。
その後、月輪を世界中に広げる広観(こうかん)と、広げた月輪を縮める斂観(れんかん)が説かれます。自身と世界との関係を感じるうえで、広観斂観は効果的な瞑想法となります。
覚鑁は、時間や場所に関係なく日夜不断に取り組めば、この現世において成就すると信じ、疑わず努力するようにと勧めています。
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注)
陀羅尼(だらに):心の散乱を防ぎ、言葉に内在する力を喚起する文言、呪文。
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