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第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法  5

2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から
  3.ソリューショントーク(解決に関する会話)

 ソリューショントークは、SFA(Solution Focused Approach)で使用されるコミュニケーション技法として、BFTC(Brief Family Therapy Center)で開発されました。BFTCは、インスー・キム・バーグやド・シェイザーを中心に1970年代に設立され、1980年代にはSFAが開発されています。

 ソリューショントークは症状や問題について会話するのではなく、ソリューション(解決)について会話する方法です。
 何らかの問題を抱えている場合、その問題について話し合い、その原因と解決策を考えるのが一般的なパターンです。しかしソリューショントークでは原因を追究をすることなく、解決された状態について会話をします。
 この手法の根底には、どんなに問題をかかえている人でも、必ず人には解決する力(リソース)があり、それを活かしていくことで、解決に導くことができるという思想があります。

 ソリューションの会話には、「すでにあるソリューションの会話」と「未来に起こるソリューションの会話」の2種類があり、その両者をうまく組み合わせて会話を進めていきます。
「すでにあるソリューションの会話」は、現時点ですでに解決していること、その人がうまくできていること、現在解決のために利用できることなどについて会話を進めます。

 例えば、「私は何をやってもダメなの」と落ち込んでいる人に「ほんの少しでもうまくできたことは、どんなことですか?」と、成功しているところを問いかけていきます。ダメな部分や失敗している理由を探すのではなく、成功している部分を見つけ出しそれを拡大させていくのです。
 「未来に起こるソリューションの会話」では、問題が解決した状態や、問題が解決したときの行動などについて会話を進めます。例えば、「すべての問題が解決しているとしたら、あなたはまず何をしますか?」「10年後をイメージして、あなたはどこで何をしているのか語ってください。」などと問いかけていきます。成功している状態を具体的にイメージすることで、それを実現する方向が見えてくるという現象が起こるのです。

 ソリューショントークでは、リソース(資源)の発見が重要な鍵となります。リソースとは、実現したいゴールを構築するために利用することのできる全ての資源(能力、性格、気質、思考、状態、体験、特徴、所有物、場所、関係、物語り その他)を意味します。ソリューショントークでは、人には必ずリソース(資源)があるという前提に基づき、リソースの発見と活用にアプローチします。そしてこのリソースは問題の近辺から発見されることが多くあります。

 例えば、どうしても積極的に人に関われないことを悩んでいる人が、「消極的である」という問題点から「厚かましくなく、控えめを好む人もいる」というリソースを見つければ、悩みは解決に向かいます。
 問題やその原因に対する問いかけは、欠けていることを発見するだけでリソースの発見にはつながらないことが多いのです。欠けていることの発見は、出来ないことを思い知らされるだけで、解決に結びつかないケースがよくあります。
 しかしソリューションについて語ることにより、その人が持つリソースが明確になり解決が近づいてきます。問題を滅するのではなく、それをリソースと見ることで解決の実現に活かす道を選ぶのです。

 このようにソリューショントークでは、問題の原因を明確にしその解決策を立案しようとする一般的な思考を離れ、ソリューションについて会話することでクライアントの望む世界を実現するという方法を採用します。
 
 これはひとつのパラダイムシフトであり、そしてとても効果的なコミュニケーションとなっています。

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