第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 3
第4章 技法編
2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から
1.システムズ・アプローチ
次に、システムズ・アプローチを仏教の観点から考えてみます。
仏教(特に大乗仏教)は、世界を縁起や空、無碍瑜伽などの相互作用から把握します。さまざまな出来事を関係から生じる現象と見る仏教は、思想的にシステムズ・アプローチと共通するところがあります。
一般的に使われる「よきご縁がありますように」というような言葉も、出来事の背後に出来事を生じさせる「何か」があることを想定しています。
しかし縁起や空は、この世界の究極的な真理(法)ですから、仏教理論ではそれを観察し、理解し、受け入れることが基本となります。
そして「よきご縁」を求める人々の声に対して日本仏教は、信仰や加持祈祷によって応えてきたように思われます。仏やお大師さまへの信仰、祈り、百度詣で、四国遍路などの宗教的行為は、仏の加護により「よきご縁」につながるものと考えられてきました。(ブッダは、このような救済的仏教を説かなかったかもしれませんが、日本仏教はこのような信仰を中心に発展してきたのです。)
また密教では、加持祈祷によって災害・苦難の除去や幸福・健康を招くという手法がありますが、これも「よきご縁」を実現するものだと考えられます。
これらの宗教的行為は、統計学的な効果測定等が行われていないため、通常心理学の土俵には登りません。しかし信仰する立場からすれば、効果の実証に意味があるのではなく、信仰しているという事実そのものが重要なのです。
仏教では、「システムズ・アプローチ」のように、眼に見えるシステムや関係そのものに直接アプローチする手法は、あまり発達してこなかったように思われます。そうではなく、システムの背後にある「何か」(心、精神、スピリチュアリティ等)に働きかけ、それが結果的にシステムや関係を変容させるという手法が中心になると考えられます。
コミュニケーション心理学におけるスピリチュアリティに関しては、次章(ベイトソンの精神論)で扱うこととします。
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