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第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法  4

第4章 技法編
2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から
  2.リフレーミング


 リフレーミングとは、ものの見方や思考の枠組み(フレーム)を変換させる手法です。リフレーミングは、MRIでも使用されているブリーフセラピーの中心的な技法になります。MRIの理論書である『変化の原理』では、リフレーミングについて次のように定義しています。

 「リフレームとは、ある具体的な状況に対する概念的および、あるいは感情的な構えや見方を変化させることであり、それは同じ状況下の「事実」の意味を規定する古い枠組みに変えて、それよりも良い、もしくは同等の他の枠組みを与えて全体の意味を変えてしまうことなのである。」

 リフレーミングは心理療法の世界だけでなく、さまざまな場面で現実に活用されています。アメリカの古典的名著『トム・ソーヤの冒険』では、ペンキ塗りの仕事をさせられていたトムが、「ペンキを塗る楽しい遊び」とリフレームすることで、友人にペンキ塗りをさせています。ペンキ塗りという事実は変わらなくても、仕事から遊びにリフレームされたことにより、友人はお金を払ってペンキ塗りに取り組むようになるのです。

 心理療法など問題や悩みを抱えている人に対するアプローチでは、ネガティブな思考や解決につながらない思考をリフレームします。例えば、「臆病でダメな私」と考え自己否定を重ねているクライアントが、「慎重に行動する私」とリフレームすれば、自己否定が少なくなり解決が近くなります。

 仏教は、元々心を中心に扱うものであり、リフレーミングの事例は多数伝えられています。人々の救済にリフレーミングが使われるのは当然ですが、少し変わったところでは、密教の手法や法具などもリフレーミングの例として挙げられるかもしれません。

 密教にはブッダが認めなかった様々な手法が存在します。例えば、護摩という手法があります。火を燃やし加持祈祷するようなことは、ブッダは認められませんでした。しかし密教では、煩悩を滅する象徴として火を取り入れています。火を燃やし火の神に祈るという儀礼を、煩悩を滅するという仏教思想にリフレームすることで、仏教の手法として火を使うことを可能にしているのです。
 このようなリフレーミングによって仏教思想の裏づけがあるからこそ、密教は仏教を名乗ることができるのです。
 

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