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第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 1

第4章 技法編
2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から


 ブリーフセラピーにはさまざまな流派があり、数多くの技法が開発されています。ここではブリーフセラピーの技法を密教の視点をふまえて考察します。

1.システムズ・アプローチ
 グレゴリー・ベイトソンは、心理療法の世界にサイバネティックス(通信制御工学理論)やシステムズ・アプローチを導入しました。生物の生存と進化を、精神活動を含めて考察したベイトソンは、統合失調症など心理療法の分野にも研究範囲を広げていきました。

 システムズ・アプローチは、ものごとを要素に分解して理解するのではなく、相互に作用しているシステムとして理解します。システムズ・アプローチでは、システムは要素に還元することはできないと考えます。システムは要素の相互作用によって成り立つため、分解した要素を単純に寄せ集めてもシステムは構築されません。したがってシステムズ・アプローチでは、要素間の動的な関係を踏まえてシステムを扱うこととなります。

 システムズ・アプローチの考え方は、ブリーフセラピー(家族療法)誕生の大きな力となっています。ブリーフセラピーの生みの親であるMRI(Mental Research Institute)では、家族療法を中心に研究を行ない、システムズ・アプローチを取り入れたブリーフセラピーを構築していきました。

 システムズ・アプローチによる心理療法では、問題は個人の中にあるのではなく、システムの中に存在すると考えます。例えば登校拒否の子供がいる場合に、「子供が登校拒否という問題を抱えている」とは考えないで、「家族というシステムのなかに登校拒否という現象がある」と考えます。

 従って解決のためには、家族というシステムに対してアプローチすることが必要となります。基本となる手法は、家族システムに存在する有形無形のルールを変更することです。家族内における父親の役割、母親の役割、子供の役割、それぞれの関係やコミュニケーションパターンを変化させます。役割やコミュニケーションパターンは、多くの場合無形のルールとして固定化されています。その固定化した状態での解決への努力が解決に向かっていない時、このような行動を「偽解決」と呼びます。

 MRIでは、「偽解決」を見つけ出し、それを変化させるためにシステム(ルール)の変更を試みます。ゲームに例えるならば、ゲームのルール内で勝ち方を見つけるのではなく、ゲームのルールそのものを変更するのです。

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