« 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 11 | トップページ | 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 9 »

第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 10

2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から
  3.ソリューショントーク(解決に関する会話)
    仏性とソリューション

仏性と煩悩
 このように根本原因から対処する仏教の手法は、大乗仏教から密教へと革新されるなかで、大きく変容します。
 密教では「煩悩即菩提」の精神に基づき、煩悩を滅すべき悪しきものとは見ないようになっていきます。

 「煩悩即菩提」は、「煩悩」と「菩提」という二元論的発想を離れ、煩悩と菩提を超越した境地(智慧)において成立します。衆生の立場からすれば「煩悩」と「菩提」は対立するものですが、覚りを得た仏の立場から見れば、煩悩を離れて菩提はなく、煩悩と菩提は不二 といえます。

 真言宗で常時読誦される経典に『理趣経』があります。『理趣経』は般若経典の一つであるとともに、『金剛頂経』十八会のうちの第六会に相当します。『理趣経』は、愛欲や性を肯定するなど、それまでの禁欲的な仏教からは一見かけ離れた内容を説き、古来よりその取り扱いに慎重が期されてきた経典です。

 『理趣経』のなかにある「百字の偈」は、「大欲得清浄 大安楽富饒 三界得自在 能作堅固利」 で終わります。大意は、「大欲、絶対の欲望は本来清浄であり、絶対の安楽にして豊かである。あらゆる世界において自在となり、堅個な利益をなすことができる」という意味になります。ここには煩悩を滅して安楽を得るのではなく、大欲でもって安楽を得、自在となることが明文されています。

 現実世界への対応としては、煩悩に気づき煩悩を利用して菩提へと至る方法が説かれています。怒りや欲という煩悩も、我執にとらわれていては苦になるだけですが、怒りや欲を活かして、利他の道に入るならば、怒りや欲も役に立ちます。つまり、問題の原因を悪として断じるのではなく、逆に活かして活用する道を選ぶのです。

 苦の根本原因を見つめる初期仏教においては、苦に満ちた衆生の立場から世界を説いています。そして苦の根本原因を滅することにより涅槃(覚りの世界)に往くという構図を描いていきます。

 一方、人に本来仏性があるとする大乗仏教(密教)では、仏の立場から世界を説きます。雲がかかれば月は見えなくなりますが、月そのものは常に清浄に輝いています。その清浄なるところを本質として世界を語るのです。

|

« 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 11 | トップページ | 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 9 »

第4章技法編ブリーフセラピーの技法」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 10:

« 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 11 | トップページ | 第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 9 »