第4章 技法編 ブリーフセラピーの技法 12
第4章 技法編
2.ブリーフセラピーの技法 - 密教の観点から
3.ソリューショントーク(解決に関する会話)
仏性を活かすソリューショントーク
仏性と煩悩の関係は、SFAで使用されるソリューション(解決)とプロブレム(問題)の関係に似ていると思われます。
SFAでは、「ソリューションについて知るほうが、問題と原因を把握するよりも有用である」という考えに基づき、うまく出来ているところ(既に存在するソリューション)や、これから実現したい世界(未来のソリューション)についてコミュニケーションします。
うまくできている部分を発見することで、その部分をさらに増やしていく方法を考えます。あるいは、これから実現したい世界を明確にすることにより、その世界を原因に捉われることなく実現する方法を考えていくのです。
このように、その人のなかに解決への力(種)があるとするSFAの姿勢は、人は本来仏であり、その人のなかに仏性があるとする密教の思想に近似しているように思われます。
人は、さまざまな悩みや問題を抱えながら、この世界に生きています。時には過ちを犯し、聖人君子のように生きている人は少ないかもしれません。それでも人は、より善き未来へ進む力を持っており、心に仏を宿しています。そのことへの信(信頼)が、未来を構築する力となるのであり、それはSFAの立場からはリソースと呼ぶことができるでしょう。
しかし技法としては、SFAと密教は大きく異なるように思われます。SFAでは、一方的に相手に教えるのではなく、対話を通してクライアントが自身のリソースに気づくように話を進めます。
このような対話をソリューショントークと呼びますが、このような対話手法は、仏教の世界ではあまり発展してこなかったように見うけられます。
したがって、仏教カウンセリングや僧侶を心の相談員として育てようとするときには、カウンセリングの基礎である傾聴や対話の方法から学ぶことが多いようです。
僧侶が人々の中にある仏性を見いだし、それを開花させていこうと考えるならば、ソリューション(解決)からアプローチし、人のリソースを活かしていくソリューショントークは、非常に有効な方便(手法)になると私は考えています。
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