第4章 技法編
1.密教の技法 - 心理療法の観点から
1.三密加持
2.阿字観(阿息観、月輪観、阿字観)
阿字観次第
阿字観を自分でやってみたい人のために、在家用の簡単な次第を掲載します。
阿息観と月輪観を行えるようにしました。 阿息観と月輪観の両方を記してありますが、どちらかひとつだけ行っても構いません。 本格的に学ぶのであれば、専門家に習いに行くことをお勧めします。
阿字観実修作法
1. 入堂(にゅうどう)
手を洗い口をそそぎ、瞑想場所に入る。明るすぎず暗すぎず、静かな場所が望ましい。
2. 三礼(さんらい)
本来は本尊に向かって行うものだが、無ければアを念じながら、三度礼拝する。礼拝は、まず合掌して立ち、次に両膝を床につけ、次に両肘を床につけ、両手の平を上に向けた状態で、額を床につける。これを三度繰り返す。 宗教的には仏への礼拝だが、心理的には心を落ち着け、身心を瞑想に入りやすい状態へと移行する効果がある。
3. 着座(調身)
結跏趺坐、または半跏坐、あるいは正座が基本の坐法である。膝を痛めているなど、これらの坐法に無理がある場合は、椅子などを使うようにする。 結跏趺坐は左足を右足の上にのせてから、右足を左足の上にのせる。半跏坐は右足を左足の上にのせるのが真言密教では基本である。禅宗とは足の組み方が逆になる。
足の痛みや身体の柔軟性などを考慮して足を組み変えるなど、無理のないように座る。体調を考慮して、座り方を変えても構わない。坐法が決まったら、身体を垂直に伸ばし、全身の力を抜く。身体を前後左右に軽く動かし、どちらにも片寄らない中立点を探す。全身の力はできるだけ抜くようにするが、身体は常にまっすぐ伸びているようにする。
手は膝の上あたりに置いて力を抜くか、腹の前で法界定印を組む。法界定印は、両掌を上に向け、左手四本の指(人差指、中指、薬指、小指)の上に右手四本の指をそれぞれ重ねる。両親指の先を軽く触れる程度につけ、円形に空間が出来るようにする。
4. 調息
まず吐くことから始める。口を少しだけ開いて、ゆっくりと息を吐く。下腹が引っ込むまで吐き、すべての息を吐ききるようにする。身体内の不浄な気も、すべて息とともに吐き出す。 吐ききったら自然に息が入るのを待つ。清らかな気が全身に行き渡るように息を吸う。 この呼吸を数回行い、深い呼吸により心身が清浄な気に満たされるようにする。
5. 阿息観
調息の吐く息に、アの声をのせていく。息とともにアの声がある。アの響きは、喉と口だけでなく、下腹からの響き、全身の響きを感じ、全身がアとなる。 音が途切れても、心のなかではアを唱え続ける。有音のアと無音のアが繰り返されるが、途切れることなくアを感じ続ける。 ある程度続けたら、アの声を少しずつ小さくしていき、無音のアとなる。有音のときも無音のときも、自身がアであることを観じ続ける。
6. 月輪観
月輪の掛け軸があるときは、掛け軸の月輪を見る。掛け軸が無いときは、目の前に清浄で明るい光を放つ円満な月輪があると心のなかで観ずる。 眼を閉じても月輪がはっきりと観じられるようになったら、月輪を自身の胸に引き入れる。
月輪と一体となり、清浄で明るく円満な月輪は、自身の心であることを観ずる。月輪を十分に感じたら、掛け軸または眼の前の場所に戻す。
月輪を自身の心として充分に観ずることができるようになれば、月輪を戻す前に、広観と斂観に進んでも構わない。
7. 出定
阿息観と月輪観などの瞑想状態からは、ゆっくりと出るようにする。眼を閉じているときは閉じたままで、眼を開けていた場合は開けたままで、ゆっくりと深く三回呼吸する。 眼を閉じていた場合は眼をゆっくりと開ける。身体と心を感じ、ゆっくりと身体を動かしていく。決して急に動かないようにする。 足を組んでいた場合は足をゆっくりと解く。足がしびれている場合は、無理をせずしびれを取ってから動けばよい。
8. 出堂
アの心を保ち、正座し合掌し一礼して出堂する。 自宅で行う場合も、入堂や三礼という場に入る儀礼を行うと、瞑想意識を高めやすくなる。また、出定や出堂という場から出る儀礼を行うことで、瞑想意識と日常意識(生活レベルの意識)を明確に区分できるようになる。
特に深い瞑想状態に入った場合は、自我の力が弱まるなど通常とは異なる意識状態になりやすい。瞑想を終えまた日常に戻るのであれば、出定や出堂などの儀礼により、日常生活に適した意識に切り替えるようにする。意識を日常に切り替えても、瞑想の時に体験したことは心に蓄積されるので、瞑想の経験が無になることはない。